もくじ
映画「僕の大事なコレクション」の感想です。(ネタバレ含みます)
内容を忘れちゃった方のために簡単なあらすじ
ジャンル | コメディドラマ映画、ロードムービー |
公開 | 2005年 |
監督 | リーブ・シュレイバー |
原作 | エブリシング・イズ・イルミネイテッド |
ユダヤ系アメリカ人の主人公のジョナサン(イライジャ・ウッド)は、家族にまつわる品物をなんでもコレクションしてしまうという変わった趣味の持ち主。
ある日祖母からもらった写真をきっかけに、主人公は自分のルーツ、幼少期に亡くなった祖父を知る為にウクライナに旅立つ。
そんな彼を現地で出迎えたのは、ブロークンな英語しか話せない通訳兼ガイド、自称目が見えないドライバー、そして犬嫌いのジョナサンをお構いなしに吠えまくる盲導犬。
強烈なカルチャー・ショックを受けながらも、祖父の足跡を辿るジョナサンは、やがて思いもしなかった過去の物語を紐解いていくのだった。
さっそく「僕の大事なコレクション」の感想
とある配信サービスから”ロードムービー”と聞いて試聴したのですが、まず初めに抱いた印象としては絵作り的にややトーンが落ち目だなというところ。
最初はやや引いた目で視聴していましたが、徐々に引き込まれていく魅力がありました。
魅力的な登場人物
登場人物の魅力の1つ目として、イライジャ・ウッド演じる主人公ジョナサン。
彼は家族の持ち物をジップロックのような袋にしまい、自室の壁に飾るというコレクション趣味の持ち主。
本作では主人公が目指す目的地まで、鉄道や車で移動するのですが、道中では家族の持ち物以外もコレクションしていきます。
物語終盤まで、なぜ彼がコレクションしていくのか全くわからなかったのですが、目的地手前の写真に映った女性の家でのシーンでその理由が判明します。
アレックス「なぜ集める?」ジョナサン「忘れないように」
たった二言のやりとりですが、彼の行動原理はとてもシンプルなものでした。
自身のルーツを探す旅に出るまで、自分の家族の持ち物をコレクションしてきた彼ですが、旅を経て”彼自身のもの”としてコレクションして行っているようにも見えます。
そして「忘れないように」という想いにも深く共感できて、物を捨てられない性分の方も割といると思うのですが(僕自身もそう)、身に起きた出来事や人との思い出を振り返るためのモノとしてコレクションしてるのだなと感じ取れます。
2つ目のポイントとしては、主人公と旅路を共にする個性的なメンバー。
通訳のアレックスと、ドライバーのバルク。
ロードムービーをいくつか観てきて、例えば「50年後のボクたちは」「グリーンブック」など、主人公と性質の違うキャラクターが登場するのが鉄板です。
アレックスに関してはストリートカルチャーを好む青年、そしてバルクは隠居したげな頑固爺さんといった印象で、几帳面できっちりとした主人公、ジョナサンとはタイプが全く違います。
車での移動という狭い空間の中、見ず知らずの人物たちが徐々に親交を深め、互いに理解しあっていく過程がロードムービーの醍醐味で、本作も存分に味わえる内容でした。
美しい風景とともに物語の確信に迫る
主人公の目指す地に近づくにつれてドライバーのバルクの過去にまで触れられていくのですが、個人的には物語前半部分では全く予測できませんでした。
バルク自身、過去のことは忘れていて途中から思い出したのか、はたまた隠したまま旅に同行したのか・・・
どちらにせよ、もう1人の主人公的なポジションとして描かれているように思います。
最終的に自ら死を選びますが、故郷のトラキムブロドで終戦を待ち続けたアウグスチーネの姉と、故郷を離れて過去に仕舞い込んだ自身を比べたからでしょうか。
その後今までと同じように生き続けたとして、彼自身心地よくはいられないからかもしれないですが、なんとも考えさせられる結末でした。
余談
ここ最近見たロードムービーで共通するポイントがもう一つ。
「50年後のボクたちは」「グリーンブック」も移動手段として使う車が青いこと。
青といえば一般的には”落ち着く”であったり、”爽快感””開放感”といった印象を抱くことが多い。
旅を経て、登場人物の課題が解決される、成長する、映画の序盤よりも明らかに良い未来になるなどの、”閉塞された今”からの解放を感じさせるような印象があり、それらを導く装置として青い車が使用されているのかと考察しています。
が、映画の印象を決定づける主要なアイテムでもあるので単純に絵作り的な理由も強い気もしてますが・・・
「ダーティ・グランパ」だとショッキングピンクの車で、内容もややセクシーコメディ的な雰囲気。
「僕とカミンスキーの旅」では深紅の車、全体的に赤の場面が多く、差し色的に使用されている印象。
ロードムービーも奥が深い。
物語に重みがあり、だけど見終わった後の爽快感もある映画
物語のベースにある歴史には暗く重みがありますが、軽快で絵的にも美しく、そしてエンディングは心地よさもある本作。
もう一度鑑賞してみてはいかがでしょうか。
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